青和特許法律事務所

損害賠償の算定方法

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2011/10月

〔概要〕
 知的財産権侵害訴訟における損害賠償の算定方法及び実務上の留意点について
ご説明致します。  

<目次>
1.民法の原則と特許法の特則
2.不当利得返還請求権 

〔詳細内容〕 

1.民法の原則と特許法の特則
 損害賠償請求権は、特許権などの知的財産権の侵害訴訟においても、民法709条に基づいて発生します。もっとも、同条による場合、侵害行為と損害との因果関係や損害の額の立証が実際上困難であるなどの難点があります。
 そこで、特許法は、因果関係や損害額の立証の負担を軽減する特別の規定(特許法102条1項、2項、3項)を設けています(以下では、特許法を例にご説明します。)。知的財産権の侵害訴訟においては、権利者は、これらの規定を活用して、損害賠償額を算定することが一般的です。
 以下、規定毎に説明します。

(1) 特許法102条1項は、基本的には、「権利者製品の利益」に「侵害品の譲渡数量」を乗じた額を損害額とする規定です(より正確には、「侵害の行為がなければ販売することができた物」の「単位数量当たりの利益の額」に「侵害の行為を組成した物の譲渡の数量」を乗じた額を「権利者の実施の能力に応じた額を超えない限度」で損害額とすることができる規定です。)。
 「権利者製品の利益」は、権利者自らの事情であるため、後述する2項と比べて、立証は比較的しやすいといえます。ただし、紛争の相手方に対し、自社の利益率、原価率などが知られてしまうため、こうした情報を秘密にしておきたい場合には、以下の2項を用いた方がよいことがあります。 

(2) 特許法102条2項は、「侵害者の利益」を損害額と推定する規定です。この場合、権利者は、自社の利益率等を相手方に知られる心配はありませんが、侵害者側の事情を立証しなければならず、1項に比べ立証は困難です。もっとも、知的財産権侵害訴訟では、侵害論を損害論に先行させて、侵害の心証が形成された場合にのみ損害論に入るという運用がされているところ、損害論に入った段階で、侵害者が任意に証拠を提出することは少なくありません。また、損害論に入った場合、裁判所が侵害者に証拠を提出するよう促す訴訟指揮が行われることもあります。侵害者が、損害の立証に協力しない場合は、文書提出命令の申立て(民訴法221条、特許法105条1項)や計算鑑定人制度(特許法105条の2)などを活用することも考えられます。 

(3) 特許法102条3項は、「実施料相当額」を損害額と推定する規定です。この規定は、賠償額の最低限度を法定したもので、1項、2項とともに予備的に主張されることが多い規定です。また、1項、2項は、特許権者が、実施品ないし代替可能な競合品を製造等していることが適用の前提となると解されているので、特許権者が実施品も代替可能な競合品も製造等していない場合は、3項が利用されます。
 「実施料相当額」は、特許発明の技術的・経済的価値、特許権者等の実施態様、侵害者の得た利益など諸般の事情を総合して判断されますが、当該特許に基づく実施許諾契約例がある場合は、同契約例が重視されます。 

(4) 特許権者は、上記のような観点を踏まえて、特許法102条1項~3項の各規定を適宜用いて、損害賠償請求の主張を組み立てることが一般的です。 

2.不当利得返還請求権  
 上述の損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から3年で時効消滅します(民法724条)。損害賠償請求権が時効消滅するような場合には、実務では、消滅時効期間が10年である不当利得返還請求権(同703条)が利用されることがあります。もっとも、不当利得返還請求権に対しては、特許法102条1項~3項の類推適用は、一般に認められていません。
 また、特許権等の侵害による不当利得返還請求権で実際に認められる返還額は、実施料相当額を限度とするものが多いようです。

以 上
(IP情報室)

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