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インカメラ手続について

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2012/02/14

〔概要〕
 特許法や著作権法等には、インカメラ手続といわれる手続が規定されています。インカメラ手続とは、いったいどのような手続なのでしょうか。ここでは、特許法におけるインカメラ手続について、その基本的事項、関連する制度及び実務について説明いたします。

<目 次>
1.インカメラ手続とは
2.インカメラ手続の特徴
3.インカメラ手続と秘密保持命令
4.実務の実際について

〔詳細〕

1.インカメラ手続とは
 特許権の侵害訴訟において、当事者、例えば原告は、侵害行為について立証するため又は侵害による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずるよう裁判所に申し立てることができます(特許法105条1項)。
 例えば、損害を立証するに際しては、通常、侵害者の侵害製品の売上数量等が記載された各種帳票類が必要となりますが、これらを保有している侵害者が求めに応じて自発的に証拠を提出しない場合には、文書提出命令を申し立てる必要が生じます。
 しかし、書類の所持者が、提出を拒むことについて正当な理由を有している場合には、裁判所は提出を命じることはできません(特許法105条1項ただし書)。
 実際においても、文書提出命令を申し立てると、侵害者は、営業秘密が記載されている等の理由から、提出を拒む正当な理由があると主張することがあります。
 かかる主張がなされた場合、裁判所は、書類の提出を拒む正当な理由があるかどうかの判断をするため、必要な場合には書類の所持者に対して当該書類を提示させることができます。この場合、裁判所のみが書類の提示を受け、書類所持者に適宜説明をさせながら、提出を拒む正当な理由があるか否かを判断します。これが、インカメラ手続といわれる手続きです(特許法105条2項)。
 裁判所は、正当な理由がある場合には文書提出命令を却下し、他方、正当な理由がない場合には、文書提出命令を発令することになります。
 かかるインカメラ手続は、特許法のみならず、実用新案法、商標法、意匠法、不正競争防止法、著作権法にも、規定されています(実用新案法30条で準用する特許法105条、商標法39条で準用する特許法105条、意匠法41条で準用する特許法105条、不正競争防止法7条、著作権法114条の3)。

2.インカメラ手続の特徴
(1)正当な理由が存在するか否かを確認する手続であること 
   上述のとおり、インカメラ手続は、あくまでも、書類の提出を拒む正当な理由があるか否かを判断するための手続きであり、提示させた書類を証拠として心証を得る手続きではありません。インカメラ手続後、文書提出命令により提出された書類が、証拠として提出されて初めて、裁判所は当該証拠から心証を得ることができます。他方、インカメラ手続後、文書提出命令が却下され、当該書類が証拠として提出されなかった場合には、裁判所は、当該書類の記載を判決の資料とすることはできません。

(2)当事者等への開示について
   裁判所は、インカメラ手続において、正当な理由が存在するか否かにつき裁判所に提示された書類を開示して意見を聴く必要がある場合には、当事者、従業者等(以下「当事者等」と記す。)及び訴訟代理人等にかかる書類を開示することができます(特許法105条3項)。
   例えば、書類に記載された事項が専門的な技術的事項等であり、裁判所のみでは判断し難い場合には、当事者等及び訴訟代理人等の意見を聴き、それを踏まえて正当な理由の有無の判断を行うことになります。これにより、正当な理由の有無について、適切な判断が可能となります。また、正当な理由の有無について、文書提出命令の申立人も意見を述べる機会が与えられますので、手続きの公正公平が確保できます。

3.インカメラ手続と秘密保持命令
   上述のとおり、一定の場合には、インカメラ手続において裁判所に提示された書類について、当事者等及び訴訟代理人等に対しても書類が開示されることになりますが、開示される書類に記載された営業秘密を保護する必要もあります。
 そこで、裁判所は、法が規定する事由に該当するとの疎明があった場合には、当事者の申立てにより、当事者等及び訴訟代理人等に対して、開示された営業秘密の目的外使用を禁止し、また、第三者への開示を禁止することを命じることができます(秘密保持命令。特許法105条の4)。
 この秘密保持命令違反には、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金等の罰則がありますので、秘密の保護が図られます(特許法200条の2)。
   以上のように、インカメラ手続の書類の提出を拒む正当な理由の判断に関しては、申立人及び書類提出者の十分な主張が尽くされるような制度が設けられています。

4.実務の実際について
 さて、インカメラ手続の流れは以上のとおりですが、実際にインカメラ手続が行われることは多くはないようです。
 その理由ですが、申立人により文書提出命令の申立てがあった場合、まず裁判所は、書類の所持者に対して、自発的な提出を促すことが通例です。そして、書類の所持者も、提出を拒む正当な理由があると主張はするものの、営業秘密の記載部分に黒塗りをするなどして、自発的に書類を提出することが少なくありません。このようにして、自発的に提出された書類で申立人が満足できる場合、インカメラ手続は行われません。なお、書類を自発的に提出する場合には、併せて、当事者間で裁判外の契約として秘密保持契約を締結することもあります。
 次に、上記2(2)で述べた正当な理由があるか否かについて当事者等の意見を聴く手続ですが、かかる手続が行われるのは実際のところ稀のようです。その理由の一つとしては、裁判所によるインカメラ手続後に、提出を拒む正当な理由があると主張して提出を拒否していた文書の所持者が、提出方法を検討して自発的に書類を提出する場合もあることが考えられます。
 なお、上記3で述べた秘密保持命令については、命令の対象となった者にとっては大きな負担となりますので、実際の訴訟追行に際しては注意を要します。

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