2020年11月24日

日本
特許・実用新案
制度・用語解説

知的財産高等裁判所「大合議」<更新第2版>

・東京高等裁判所の特別支部として平成17(2005)年4月に設置された知的財産高等裁判所(知財高裁)は、通常部として第1部から第4部までの4ヶ部において、通常3名の裁判官の合議体によって事件の審理を行います。知財高裁設置前の平成16(2004)年4月の民事訴訟法一部改正により、東京高裁の民事部に5名の裁判官から構成される合議体により審理及び裁判を行う特別部が設置され、特許権等に関する訴え(特許・実用新案・半導体集積回路配置・プログラム著作等の技術型事件)を審理判断することになりました。この大合議が知財高裁の特別部に移行しています。

・知的財産権を巡る紛争は重要な法律上の争点を含み、裁判所の判断が企業の経済活動及び我が国の産業経済に重大な影響を与える事案も少なくありません。知的財産権事件では、一定の信頼性のあるルール形成及び高裁レベルでの事実上の判断統一が要請されます。大合議で審理された事件は、実質的には、知財高裁全体での検討を経て判断が形成される運用となっています。なお、大合議の審理については、条文上、審決等取消訴訟については特許法182条の2、侵害訴訟については民事訴訟法310条の2に規定されています。

・大合議事件は、第1部の裁判長を兼務する知財高裁所長が裁判長となり、第2部から第4部の各部の総括判事又はこれに準ずる判事3名と主任裁判官1名から構成され、知財高裁判事全員の討議検討を経て審理・判断されるため、知財高裁全体の意見を反映した運用が行われることになります。

・知的財産権の侵害事件について地裁レベルでの判断が割れるような案件については、大合議審理によって専門的視野から解釈の統一を図り、紛争の未然防止や法的安定性を担保するために、大合議制度が積極的な役割を果たすことが期待されています。

・知財高裁では、12件が既に大合議事件として審理されました(別紙参照、4はその後訴え取下)。また、平成31(2019)年3月25日には、第13件目の大合議事件として平成30年(ネ)第10063号「特許権侵害差止等請求控訴事件」(原審・大阪地裁平成27年(ワ)第4292号)が新たに指定されました。

・参考までに、知財高裁の歴代所長名と在任期間を以下に記します。

1. 篠原 勝美   平成17(2005)年4月1日 ~平成19(2007)年5月22日
2. 塚原 朋一   平成19(2007)年5月23日~平成22(2010)年8月20日
3. 中野 哲弘   平成22(2010)年8月21日~平成24(2012)年3月11日
4. 飯村 敏明   平成24(2012)年3月12日~平成26(2014)年6月14日
5. 設樂 隆一   平成26(2014)年6月15日~平成29(2017)年1月26日
6. 清水 節    平成29(2017)年1月27日~平成30(2018)年5月4日
7. 髙部 眞規子  平成30(2018)年5月5日~令和2(2020)年10月18日
8. 大鷹 一郎   令和2(2020)年10月19日~

※参考資料
    Law & Technology 50号 「知財高裁5年の回顧と展望」(中野哲弘)

2020年11月24日(最終更新)

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