2026年6月4日の米国最高裁判決である、Hikma Pharmaceuticals USA Inc. v. Amarin Pharma, Inc.事件を紹介します。本事件は、Hikma Pharmaceuticals USA Inc.(以下「Hikma社」)によるジェネリック医薬品の販売が、Amarin Pharma, Inc.(以下「Amarin社」)の特許に対する「積極的な誘引侵害」(米国特許法第271条(b))に該当するか否かが争われた事件です。Amarin社は、Hikma社の特許用途を除外したラベル(=スキニーラベル)や各種公表資料の内容を総合すると、Hikma社が医師にCV適応(=特許用途)での処方を積極的に促したと主張しました。連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は、医師がHikma社によるラベル等での声明(statements)を特許侵害への指示又は推奨として読み取る可能性があることは、「少なくとももっともらしい」(at least plausible)と判断しました。これに対し、最高裁は、誘引は、特許侵害という「所望の結果をもたらすための」(to bring about the desired result)「肯定的な」(affirmative)ステップを講じることを伴うものでなければならないとしたうえで、Hikma社によるスキニーラベルでの声明や「ジェネリック同等品」(generic equivalent)という表現等を総合しても、Amarin社の主張はHikma社が特許侵害を促す肯定的なステップ(affirmative steps)を講じたことを確立していないと判断し、CAFC判決を破棄して事件を差し戻しました。本稿では、この最高裁事件について、関連する前提知識について補足説明しつつ、概説します。