2022年12月09日

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UPCサンライズ期間開始日の延期(2023年3月1日)について

 開始に向けて準備が進められている欧州の統一特許裁判所(UPC)について、サンライズ期間の開始日が2か月延期されるとの発表がありました(2022年12月5日付UPCウェブサイトNews)。サンライズ期間は、従来型欧州特許等をUPC管轄から除外するための「オプトアウト」の事前申請を受け付ける期間です。先日公表されたロードマップでは2023年1月1日開始予定とされていましたが、2か月延期して、2023年3月1日にサンライズ期間を開始するとのことです。

  

 オプトアウトの申請は、UPCが提供する案件管理システム(CMS)を介してユーザーが直接行うことができます。案件管理システムへのアクセス及び署名に必要な認証システムが強化されたことに伴って、ユーザーに十分な準備期間を与えるために、今回の延期を行ったとのことです。

  

 UPC協定(UPCA)の発効日も2か月延期され、2023年6月1日になるとのことです。このUPC協定の発効日から、UPCが始動する(事件を受け付ける)ことになります。

  

 なお、欧州特許庁(EPO)における「単一特許の早期申請」及び「欧州特許付与の決定の遅延申請」については、サンライズ期間の上記延期に関わらず、2023年1月1日から受け付けるとのことです(2022年12月6日付EPOウェブサイトNews)。

  

 今回の延期に基づく更新後のロードマップの詳細は、下記のとおりです。

  

(1)ドイツによる批准書の寄託
 ドイツによる批准書の寄託が、UPC協定発効のための最後の要件となっています。ドイツによる批准書の寄託は、サンライズ期間の開始日(寄託の次の月の最初の日)、及びUPC協定の発効の日(寄託から4月後の最初の日)を決める重要なイベントです。このドイツによる批准書寄託の時期も、上記延期に伴って2か月先送りされ、2023年2月下旬頃になるものと思われます。

  

(2)サンライズ期間
 上記のとおり、オプトアウトの事前申請を受け付けるサンライズ期間が、2023年3月1日に開始されると予定されています。このサンライズ期間では、UPC協定発効までの3カ月間にわたって、オプトアウトの申請(従来型欧州特許及び欧州特許出願をUPCの管轄から除外するための申請)をすることができます。

  

(3)UPC協定の発効
 上記のとおり、UPC協定の発効が2023年6月1日に予定されています。このUPC協定の発効によって、国際裁判所UPCが正式に始動します。また、このUPC協定の発効に伴って、欧州特許庁(EPO)における単一特許(UP)の取扱いも正式に開始されます。

  

(4)補足
 オプトアウトの申請は、UPCが提供する案件管理システム(CMS)によりユーザーが直接行うことができます。サンライズ期間の開始前に案件管理システムを試行できる練習期間が設けられています(2022年11月24日付UPCウェブサイトNews)。

  

 ロードマップで公表されていたその他の準備作業(判事の任命など)は順調に進んでいるとのことで、UPCの開始時期が2023年6月1日よりもさらに遅延することはないであろうとのことです。今回の延期によって、サンライズ期間までに時間的な余裕ができましたが、オプトアウト又は単一特許(UP)取得を検討している場合には、早期に準備を進めるのがよいと思われます。各制度の詳細については、弊所ニュースレター「欧州の単一特許保護制度」をご参照ください。